伊藤博之事務所ブログ

秋田県能代市の司法書士/行政書士 伊 藤 博 之 です。令和3年には『土地家屋調査士』も登録。人口減少率日本最大の地方を舞台に、士業のONとOFFを綴るブログ!

有限会社の登記事項(会社の本店)の移記ミスに遭遇した件

5月に入り、世間的にはゴールデンウイーク後半のようですが、

今いち天気がぱっとしませんね。

晴れたら自宅の外壁、杉を使っている部分にクレオトップ(だと思う)を

塗りたいと考えてますので、

何日間かはさっぱりと晴れてほしいところです。

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さて先日、有限会社の役員変更登記の依頼がありました。

まずは法務局に登記されている内容を確認するため、

登記情報提供サービスにより当該会社の登記事項を請求してみました。

 

ところ、会社の本店が「秋田県※※字二夲柳※※○番地○」となっていたのです。

一見するとまともに見えますが、よく見ると違和感のある字が…

 

『二夲柳』?

 

二本柳の『本』がなんか変だな…

 

拡大して見ると『二夲柳』

微妙に『本』ではありません。

なんでわざわざこんな似たような字を使っているんだろう…

 

ここでこの字の対応策について考え込んでしまいました。

といっても数分程度ですが。

まず、

1、依頼は役員変更登記ですので今の字の違いは気づかなかった、

  もしくは無視して登記を進める。

2、徹底的に調査する。

この2択。

 

1の場合の利点は、依頼者の依頼内容通りに業務が終了するのであって

微妙な一文字に関わらずに済ませられるのであれば、

それにこしたことはないのではないか。

1の場合のダメな点は、この一文字が違うために本店を「二本柳」と登記申請

した場合、登記されている字でないため法務局から補正するように言われる

可能性がある。(実際は言われないとは思いますが)

更に、今回訂正しなければこの会社の本店の「二本柳」はずっと『二夲柳』

のままである。

 

そんで2だろうと。

司法書士法の第2条(職責)によると、

司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、

公正かつ誠実にその業務を行わなければならない」とありますし。

 

2の場合原因として考えられることが3つばかりありました。

2-1 1つは昔の登記簿(簿冊形式)から現在のコンピュータ化するため

    登記簿を移記する作業において法務局で間違えた、

    いわゆる『移記ミス』といわれるもの。

2-2 そもそもこの会社の申請(設立登記時)が『二夲柳』で申請して、

    法務局では申請に基づいて登記の処理をしてしまった。

2-3 実は、この場所は「二本柳」ではなく正式には『二夲柳』である。

 

こうなるとやってることは、司法書士業ではなく探偵業に近い感覚を覚え、

名探偵コナン」や「シャーロック」並みの推理を働かせました。

 

以上のうち、もし、2-2だと非常にやっかいで、本店を訂正するのに更正登記が

必要となり、登記申請時の印紙代(登録免許税)だけで2万円もかかってしまいます。

『二夲柳』を『二本柳』に訂正するだけで。

厳密に言うと『夲』本』に直すだけで。

と言うかちょっと棒を伸ばすだけで。2万円です。

(なんか釈然としません)

 

その後、依頼のあった有限会社さんに現在の登記事項の本店が『二夲柳』で

登記されていることを説明し、実際の地名は二本柳』で間違いないことを確認し、

会社の昔の謄本はどう登記されていたか確認したい、としたところ、

会社に昔の謄本は存在しないことが確認されたため、秋田地方法務局に

昔の謄本(コンピュータ化前の閉鎖謄本)を取得する了解をとり、

取得して確認したところ、

  :

  :

  :

昔の謄本上はどう見ても二本柳』。

これは、疑いようのない移記ミスだと確認でき、法務局に移記ミスがある旨

連絡をし、来週役員変更登記を申請予定だとして、法務局で職権により更正

する確約をとり、その後、無事依頼のあった役員変更登記も完了。

そして…

完了後の会社の謄本(履歴事項全部証明書)を取得してみたところ、

会社の本店は何事もなかったかのように二本柳』になっており、

法務局の職権更正により『二夲柳』の文字は跡形もなくなっていました。

 

どうしたらいいか逡巡し、(司法書士法第2条に基づき)職務を全うした結果が…

普通に訂正されていた、という。なかなかマニアックな世界ですね。

登記の世界は。